2011年10月23日日曜日

IMF理事会、ギリシャ向け300億ユーロのスタンド・バイ取極を承認

(参考仮訳)
プレスリリース No. 10/187
即時解禁 2010 年5 月9 日

IMF理事会、ギリシャ向け300億ユーロのスタンド・バイ取極を承認
国際通貨基金(IMF)の理事会は本日、ギリシャ政府の経済調整及び改革プログラムへの支援として、3年間で264 億SDR(300億ユーロ)のスタンド・バイ取極を承認した。

これにより、IMF は48億SDR(約55億ユーロ)の金融支援を直ちに実行するが、これはIMFと欧州連合(EU)が協調して行う合計200億ユーロの即時融資の一環である。IMF は2010年に合計約100億ユーロ、EUは約300 億ユーロの支援を行うとしている。

このたび承認されたスタンド・バイ取極は、3年間で1,100 億ユーロ(約1,450 億米ドル)にのぼるEUとの協調融資政策の一環であり、ギリシャのクォータ(出資割当額)の3,200%以上という例外的な規模となっている。なお、同取極は、IMF の緊急融資メカニズムを適用し、手続きを迅速化して承認されたものである。

ドミニク・ストロスカーンIMF専務理事は、「ギリシャ政府による一連の歴史的な行動指針へのコミットメントは賞賛に値する。この誇り高い国にとりこれは、現在の様々な課題を克服しギリシャ国民により良い未来を保証する機会となるだろう」と述べた。「本日、IMF はギリシャとその国民に対し可能な限り支援を行うとするコミットメントを示した。今後の道のりは険しいと予想されるが、同国政府は現実的なプログラムを策定している。これは、経済的観点からのみならず、弱者に対する保護策が含まれるなど社会的観点からもバランスが取れており実現可能な策であ
る。今こそ実行することが重要なのだ。EU のパートナーと共に我々は、ギリシャが直面している問題への取り組み、さらには成長、雇用そして一層高い生活水準を時間をかけて回復するとした努力に対し、前例のない規模での支援を行う」
国際通貨基金(IMF)
米国 ワシントンDC

2
さらに同専務理事は「ギリシャ支援に向けた本日のIMF の断固たる行動は、ユーロ圏の安定と世界経済の回復の確保に向けて現在行われている、広範な国際的取り組みに寄与するだろう」と述べた。

ギリシャ政府は、同国が直面している経済危機への対策として大胆な政策パッケージを策定した。これは多年にわたり実施されるプログラムで、ギリシャの深刻な財政不均衡の是正と、成長と雇用の回復をもたらす経済の競争力強化という2 本柱を主軸としており、その実現に向けプログラム初期の段階で大規模な取り組みを実施する。

また同プログラムは公平を念頭に策定されたもので、社会全体で負担を分担すると共に、経済的に最も弱い立場にある人々を保護するとしている。国際社会は前例の無い規模での金融支援を通し十分な資金をギリシャに提供し、市場の信認の回復、成長の促進、さらにはギリシャが財政不均衡の緩和に向けた政策実績を積むための時間を担保することで、その取り組みを支える。
IMF 理事会によるギリシャへの支援の承認を受け、ジョン・リプスキー筆頭副専務理事兼議長代理は以下のように述べた:
「ギリシャ経済は、ここ数ヶ月の悲観的な市場心理を受け揺らいでいる。こういった圧力は、持続不可能な同国の国家財政や競争力の弱さを反映したものだ。
これらの問題の解決を図った当初の試みは、市場の信認回復に失敗し、銀行部門へのマイナスの波及効果をもたらした」
「ギリシャ当局は、信頼を再構築し市場の信認を回復するために、初期の段階で力強い政策を実施する大胆なプログラムを構築した。同プログラムでは、(1) 財政の持続可能性の回復 (2) 対外競争力の強化 (3) 金融部門の安定性の保護、を重要事項としている。調整に伴うギリシャ国民への負担の軽減を図り、且つ同国政府がこ
れらの改革を実行し、信頼に足る実績を打ち立てる時間的猶予を提供するために、
国際社会は前例の無い規模での金融支援策の実施に移った。他国への波及という大
きなリスクに対する懸念に加え、ギリシャ政府が同プログラムでの実施を明言して
いる大胆な施策は、IMF の財源への前例の無いレベルでのアクセスに値する」
「政策調整の柱は、2014 年までに赤字をGDP の3%以下とし、債務の持続可能性
の回復を目指した財政再建である。ギリシャ当局は目標達成に向け、GDP の11%
に相当する一連の大規模な財政措置を策定した。これら施策は既に明確であり、プ
ログラムの初期段階において大々的に実施される。さらに、経済的に最も弱い立場
にある人々を保護し、比較的富裕な層への税負担を高く設定するなど、調整に伴う
負担を社会全体で公平に分担するとした策も含まれており適切である。また公的部
門の合理化に向けた施策も含まれている」
「経済の調整が進むにつれ必然的に産出高が短期的に減少するが、構造改革により
対外競争力が回復し市場の信認も改善することから、経済は回復軌道に乗ることが
3
できるだろう。労働市場の柔軟性の向上、国内競争の促進、並びに行政の合理化に
むけた改革を断固として実施することが重要であろう」
「ギリシャ政府が発行若しくは保証した市場の債務証券の買戻しを可能とするとし
た先般の欧州中央銀行(ECB)による決定は、銀行の流動性の改善に寄与するだろ
う。また、金融安定化基金(Financial Stability Fund)の設立により、景気後退局面
においても銀行資本は適切な水準に保たれ、金融の安定性が確保されるだろう。ま
た銀行の監督及び法的枠組みも強化される予定である」
「ギリシャ当局によるプログラムは、現在の状況及び制約に対する大胆且つ適切な
対応策だといえるが、著しい下振れリスクが残る。今後の課題は、改革に必要な国
民世論を確保しつつ、同プログラムを厳格に実行することだといえる」
「ギリシャの2008 年の財政赤字並びに公的債務の過少申告は、IMF 協定第8 条5
項の義務に対する違反行為であり遺憾である。ギリシャ当局は、既にデータの不備
に対し修正措置を講じており、IMF、EU 各国そしてEU 統計局と協議の上、更なる
修正措置を採ると明言している。この度の違反行為に関し、IMF がその規定により
追加的に措置を採る必要は認められない。今後は、IMF への報告義務の遵守が求められる」
添付
最近の経済動向
ギリシャは、根深い脆弱性を抱えたまま世界的な景気後退に突入した。成長が鈍化
し、世界レベルでリスク選好が低下するなか、同国の対外借入に対する高い依存が、
長期に渡る財政並びに対外不均衡に関する懸念を高める結果となった。 新政府によ
る2008 年及び2009 年の財政赤字に関するデータの大幅な修正により、財政赤字は
当初の見通しの2 倍に膨れ上がり、また公的統計の虚偽報告が発覚したとして、市
場に衝撃が走った。同時に、2009 年末までに公的債務がGDP の100%以下からGDP
の115%へと拡大した。さらに、2009 年の景気後退にもかかわらず、 同国の経常赤
字はGDP の11%に達したが、これは内需が過度に活発で対外競争力が弱いという
問題を示すものとなった。
2010 年1 月の新政権によるこれら脆弱性に対する初の試みは、説得力に欠けるもの
だった。既にEU の安定・成長協定の過剰財政赤字是正手続き(EDP、Excessive
Deficit Procedure)がギリシャに対して適用されており、ギリシャ当局は財政赤字を
2012 年までにGDP の3%以下にまで減らすことで合意した。しかしながら、2010 年
4
の予算目標を支える施策は不十分であり、赤字削減計画の基盤であったマクロ経済
の想定は過度に楽観的なものであったことから、市場の不安をさらに煽る結果とな
った。
欧州委員会(EC)との広範な協議の後、2010 年2 月及び3 月に追加的財政措置がギ
リシャ当局より発表されたが、これらもやはり市場の信認を十全に強固なものにす
ることができなかった。そして、ユーロ圏のパートナーによる融資の確約が不十分
だと市場が判断したことから、さらに不安定化した。 結果として、市場心理はさら
に落ち込み財政の持続可能性に対する懸念が深まり、信認の危機がさらに悪化する
ことになった。海外からの資金は枯渇し、国債のスプレッドは急激に拡大し、同国
の経済はリスクが拡大を続ける下方スパイラルに脅かされることとなった。
プログラム要旨
ギリシャ当局のプログラムは、3 項目を重要課題としている:
1) 信認の回復と財政の持続可能性:同プログラムでは、前例の無い規模での財
政上の取り組みを直ちに実施すると共に、2013 年まで明確に特定された施策
が継続される。これは、信認を向上させ市場へのアクセスを回復すると共に、
債務の対GDP 比を2013 年以降確固たる減少軌道に乗せることを図るもので
ある。また各施策は、ギリシャの社会的弱者への衝撃を和らげることを目論んでいる。

2) 競争力の回復:同プログラムでは、名目賃金及び給付金の削減、及びコスト削減や価格競争力の向上を目指した構造改革も実施することになっているが、これは、ギリシャの投資並びに輸出主導型の経済モデルへの転換に寄与するだろう。また、透明性の向上と経済における行政の役割の低減も図ることになっている。

3) 金融部門の安定性の保護: 銀行システムは、銀行の収益性とバランスシート
に影響を及ぼすと考えられるデフレーションを経験しているが、ソルベンシ
ー圧力に対処する上でのセーフティーネットは、金融安定化基金の設立によ
り向上するだろう。国債の格下げに起因する流動性への圧力の緩和に向け、
政府による既存銀行への流動性支援制度は拡大されるだろう。
成長及びインフレ期待
5
実質GDP 成長率は、2010 年から2011 年にかけ急激に縮小し、その後回復は見込ま
れるものの、失業率は2012 年までに最高で約15%に達すると予測される。2010 年
から2011 年という改革の初期段階で集中的に行われる財政調整は、短期的に内需を
抑制するだろう。しかし2012 年以降は、改善した市場の信認と信用市場への復帰、
更には包括的な構造改革により、成長の回復が実現すると思われる。
インフレは引き続きユーロの平均値を下回る見込みである。価格の調整が必要とさ
れているが、これは財政調整や公務員の賃金、給付金、及びその他コストの削減に
むけた取り組みを通した内需の引き締めにより実現すると思われる。デモンスト
レーション効果により、民間部門の賃金も抑制されると見られるが、これは価格競
争力の回復に貢献するだろう。

その他
ギリシャは、1945 年12 月27 日にIMF に加盟、IMF における現在のクォータは8 億
2,300 万SDR となっている。
IMF 並びにギリシャに関する詳細は下記を参照

0 件のコメント: