【日経】2011/10/23 2:03
FXが11月中に決定する。防衛省の作業では、米国が絡むF35AとFA18の2機種を軸に調整が進む。今後20年以上、日本の空の守りの要となるだけに、性能の高さや国内企業がどれだけ生産に関与できるかという問題に加え、同盟国・米国との関係が重要な要素になる。
「活発な活動を繰り返す中国の動きがあり、安全保障環境は不透明さを増している」。16日、航空自衛隊百里基地(茨城県)での観閲式。空自隊員を前に訓示した野田佳彦首相は中国を名指しして、日本周辺の防衛強化の重要性を訴えた。
中国は、ロシアとともに日本の領海や領空への接近を繰り返しており、レーダーに探知されにくい最新鋭の第5世代機「殲20」を開発中だ。野田首相は父親が自衛官の家庭に育った。この日は、事務方が用意した原稿を読まずに中国への懸念に触れ、周囲を驚かせた。
「性能が一番大事だ」と一川保夫防衛相はFXの選定基準を巡りこう指摘する。中ロが開発中の最新鋭機は現行機より飛躍的に能力が高い。空対空戦では「量より質」(空自関係者)が常識で、日本は他国に比べて配備機数も限られるため、空自内では性能が最も優れるF35の待望論が強い。
「日本企業の生産・維持・管理への関与が重要」との声も多い。国内で50年以上続いた戦闘機生産が先月で終了した。防衛産業界にはFX製造に携われなければ「関連企業の技術低下は深刻だ」という危機感がある。
■外交問題にも直結
その点で、ユーロファイターは「核心技術に制約を設けない」と日本生産を認める。FA18も「7~8割の国内生産が可能」と積極的だ。こうしたライバルの動きをみて、これまで技術開示に慎重だったF35を設計・製造する米ロッキード・マーチン社も、最近は機体の最終組み立てやエンジンの一部製造を日本企業に認める譲歩を見せ始めた。納期に関しても、F35は当初、防衛省が求める2016年度導入に間に合わないとされていたが、ロッキード社は「問題ない」とアピールする。
隠れた「決定的な選定要素」(政府高官)とされるのが、日米同盟への影響だ。日米は陸海空全ての分野で部隊連携を深めており、6月の日米安全保障協議委員会(2プラス2)でも「日米の部隊を近代化し、相互運用性を向上」すると確認した。対中政策でも米国との密接な連携は不可欠。日本の空の守りの要となり、大型商談でもあるFXがユーロファイターに決まれば米政界や産業界の反発は必至だ。「FXは外交問題に直結する」と政府高官は言い切る。
11月末までの機種選定までに、まず今月25日にパネッタ米国防長官が来日し、来月中旬にはアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を利用して首相とオバマ米大統領との首脳会談が控える。「F35が有力、FA18が対抗」との見方が政府内でささやかれるなか、政府は様々な思惑を抱えてFX選定に臨む。
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