自衛隊は「サイレント・マジョリティー」の信頼に応えろ
2012.8.11 18:00 (1/5ページ)[名言か迷言か]
陸上自衛隊第1師団第1普通科連隊(東京都)が7月16、17の両日、首都直下地震を想定し、練馬駐屯地から都内各区役所まで迷彩服で駆けつける訓練を実施した。今後も続発するかもしれない震災に備え、必要不可欠と思われるその訓練に対する一部の新聞の事前報道に強い違和感を覚えた。
「迷彩服姿で区役所『宿営地化』」「自衛隊 首都制圧?」
こんな旧態依然でステレオタイプな自衛隊悪玉論に基づく見出しが躍ったのだ。陸自幹部もこれには「首都制圧なんて…。とてもそんな考えはないのに」と肩を落とした。
新聞だけではない。練馬駐屯地では市民団体を名乗る数十人が出発する隊員に「人殺しの訓練をやめろ」「自衛隊は基地に帰れ!」などと罵声を浴びせた。
第1普通科連隊は6月にも隊員約20人が迷彩服姿で都内市街地で歩行訓練を行ったが、このときにも隊員たちは同じようなシュプレヒコールを受けた。だが、これらの新聞や「市民団体」は大多数の国民の声を代弁しているとは思えない。
内閣府が3月に公表した世論調査では、自衛隊に好印象を持つ人は91・7%と過去最高だった。自衛隊による東日本大震災の被災地での奮闘は、ほとんどの国民に感銘を与えている。訓練に批判的なのは、いわば「ノイジー・マイノリティー」(うるさい少数派)にすぎないはずだ。
にもかかわらず、いろんな場面で自衛隊は萎縮しすぎていると感じる。
4月に北朝鮮が長距離弾道ミサイル発射した際、政府は沖縄に地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を配備した。ミサイル落下から沖縄県民を守るためだったが、沖縄の地元紙は「軍事優先色が濃い対応は沖縄社会にとってマイナス面が多い」「心穏やかでない気持ちを抱いている」などと報じ、自衛隊への警戒感ばかりを強調した。
長年、日本社会の「鬼っ子」扱いを受けてきた自衛隊側がこれを意識しなかったわけがない。自衛隊は発射当日に早速、撤収計画を手際よく発表した。陸自幹部は「自衛隊増強の地ならしとか思われないための措置だった」と振り返る。
また、部隊派遣の際の対応も極めて抑制的だった。陸自が住民救助のための隊員派遣を当初案の約750人から約400人に削減したのは、沖縄の意向を忖度(そんたく)したからだ。途中ではさらなる圧縮案も示され、これに君塚栄治陸上幕僚長が「任務に必要な人数にしろ」と指示したのは、ミサイル落下から県民を守る万全の態勢を敷くためだ。
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