2011年12月18日日曜日

中国軍“遠征”能力を強化 「国際協力」の艦船、中米・アフリカに




中国軍“遠征”能力を強化
「国際協力」の艦船、中米・アフリカに
2011/11/28付 情報元 日本経済新聞 夕刊

【北京=森安健】中国軍が「国際平和協力」を前面に打ち出しつつ、遠隔地での行動能力の強化に乗り出した。医療支援の名目で病院船を初めて米国のおひざ元の中米カリブ海諸国に派遣。海賊取り締まりのためソマリア沖にも海軍艦艇を長期派遣している。これらの活動は表向きの目的に加えて、中国から離れた地域で一定期間、作戦をする戦力投射(パワープロジェクション)能力の向上にもなり、米国などが警戒を強めている。

 ▼無料の治療活動 中米コスタリカに23日、中国軍の全長178メートルの病院船「平和の箱船」が到着し、26日までに37件の手術を実施した。今回の中米訪問の最後の寄港地で、滞在7日間にわたり地元の人に無料の治療活動を提供する。病院船には300床のベッド、8つの手術室を完備。1日に40回の手術を実施できる同船は、北京にある大型病院に匹敵する機能を持つという。

 昨年9月に初の海外航行に出発し、3カ月間かけタンザニア、ケニアなどアフリカ東部の諸国を回った。今回は約100日間かけてカリブ海の4カ国を訪問。中国軍の平時の貢献ぶりを強調している。

 一方で、有事には負傷兵を治療する機能を担う病院船の外国での活動は、中国海軍の外洋展開力を強める側面もある。米海兵隊のアモス総司令官は今月2日、米議会下院軍事委員会の公聴会で「中国の病院船が我々の領域で活動している」と警戒心を示した。

 中国軍は2009年1月、海賊被害が多発するソマリア沖のアデン湾に艦隊を派遣し、中国の商業船などの護衛を開始。親善目的の訪問を除けば、中国海軍艦隊の遠隔地への派遣は初めてだった。以来、派遣は9回に及び、艦隊はミャンマーやサウジアラビア、エジプトなどに寄港。27日には駆逐艦「武漢」が初めてクウェート入りした。

キューバのハバナ港に入る中国軍の病院船=ロイター

 ▼装備増強も目立つ さらに今年2月にはソマリア沖から一部の艦船をリビアに振り向け、政情不安で危険にさらされた中国人労働者を収容。中国海軍の即応力や機動性が着実に向上してきたことを示している。

 同時に遠隔地展開を想定した装備品の増強も目立ってきた。中国軍制服組の最高幹部、陳炳徳総参謀長は今夏、ウクライナを訪問し、大型輸送機の製造協力で合意した。さらに空母や敵前上陸などに投入するドック型揚陸艦、空中給油機など「戦力投射」に用いる装備の導入も進めている。

 米国防総省は今年8月に発表した中国の軍事力に関する年次報告書で、15年以降になれば「中国軍は数個連隊の地上部隊と十数隻の艦船を遠隔地に投入し、作戦を継続実施する能力を持つ」と予測。戦闘を目的としていなくても「外交交渉を有利に進めたり、紛争を自らの望む形で収拾したりするための威圧目的で使われる可能性がある」という。

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