2011年8月19日金曜日

米特殊部隊「シールズ」 ベールの向こうの精鋭 アフガンで戦死

米特殊部隊「シールズ」 ベールの向こうの精鋭 アフガンで戦死
2011.8.19 00:44

「決して忘れない」。タミルソンさんの母校の入り口の電工掲示板には数種類のメッセージ映し出されていた

 アフガニスタンで起きたNATO軍のヘリ撃墜で17人の犠牲者を出した米海軍特殊部隊シールズ(SEALS)。国際テロ組織アルカーイダの指導者、ウサマ・ビンラーディン容疑者襲撃作戦に投入されて注目されたが、任務や隊員の詳しいプロフィルなどはベールに包まれている。ヘリ撃墜で犠牲となった一人の隊員の出身地を訪ねた。(米アイオワ州ロックフォード 佐々木類、写真も)

 アイオワ州の州都デモインから車で3時間。米先住民族インディアンの居住地だったことで知られるロックフォード村にあるシールズ隊員、ジョン・タミルソンさん(35)の自宅は地平線まで広がるトウモロコシ畑に囲まれていた。

 母親のキャシーさんらしき人が出てきたが、「記者の方には何も言うことはありません」とひと言。裏庭から出てきた家族の一員だという男性が、「悪いがジョンについては何も言えないんだ」と口を閉ざした。

ヘリは6日、反政府武装勢力タリバンと交戦中だった別の部隊の支援に向かう際に地上からの攻撃を受けて墜落した。米国防総省は11日、シールズ隊員を含む米兵30人の氏名や出身地、年齢を公表したが、陸海空の特殊部隊を管轄する特殊作戦軍は遺族の安全確保のため氏名公表に反対していたという。

 ジョンさんの戦死を報じたAP通信も顔写真は配信していない。唯一、自宅庭に掲げられた半旗が、ジョンさんの戦死を物語っていた。

 ジョンさんを子供のころからよく知る近所の自動車修理工場経営、マーク・ビッグスさん(54)によると、ジョンさんの高校時代の成績はトップクラス。レスリングとトライアスロンの選手でスポーツ万能だったという。

 マークさんは、ジョンさんについて、「曲がったことが嫌いですべてにおいて真面目だった。海軍に入隊したのは知っていたが、シールズの隊員とは知らなかった。年に3~4回は帰郷してときどき顔を見せてくれたが、仕事の話は一切しなかった」と語る。

近所のアラール・ハーブさん(71)は、「海のないこんな片田舎から海軍のエリート部隊に選抜されていたなんて、わが村の誇りだ」と話した。

 AP通信によると、ヘリ撃墜で死亡したシールズ隊員のほとんどは、存在自体が語られることが少なく、徹底した秘密のベールに包まれ「シールズの中のシールズ」といわれる「チーム6」のメンバー。ジョンさんもチーム6に所属していた可能性が高い。

 米軍は犠牲者の経歴などの公表に消極的だが、ジョンさんが卒業した高校の入り口にある電光掲示板にはこんなメッセージが出されていた。

 「シールズ隊員、ジョンくん、ぼくらは君を決して忘れない」

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