【長崎新聞】6月18日
海自佐世保教育隊の訓練密着
懸命に短艇をこぐ訓練生=佐世保港
現在、海自佐世保教育隊(司令小梅三津男、佐世保市崎辺町)の施設では、8月まで海上自衛隊員としての心構えなど基礎を学ぶ訓練の真っ最中だ。
海自の門をたたいた18~26歳の訓練生は高校卒業後すぐに入隊した人や転職者などさまざま。年齢や体力も違う若者たちは何を目的にどんな訓練を重ねているのか。先月の4日間、密着してみた。
■起床3分で集合
ラッパの音が鳴り響く午前6時。静かだった隊舎内のあちこちで大声のあいさつが聞こえてくる。「15秒経過…30秒経過」という教官の声を背に、身なりを整えた丸刈りの訓練生が広場に駆けだす。早い人は起床から1分半で、遅い人でも3分もたてば全員が集合。この反復で即応力を身に付ける。
「海上自衛隊体操」で体をほぐすと、筋力トレーニングをしたり、走ったり。目覚めてから30分ほどなのに、大量の汗が見られる。
午前8時ごろ、グラウンドに整列すると「5分間講話」がある。平日は原則外出禁止の閉鎖された敷地内では世の中の動きに鈍感になりがち。このため、訓練生は時間を決めてラジオニュースを聞いたり、新聞を読んだりし、関心のあるニュースや話題について前に立って発表する。
朝礼が終わると、その日の決まった教務に入る。取材期間中は安全保障に関する座学や小銃の扱い方、水泳、球技、陸上警備の基礎などに取り組んでいた。訓練の様子を見て回ると「自衛官の体力が一般人と同じじゃ困るんぞ。災害時に助けられるか」などと教官の厳しい声が響いていた。
訓練生が初めて体験する短艇(ボート)にも乗った。「一、二、そーれ」の掛け声で訓練生は必死にかいでこぐが、安定しない。「座礁するぞ! 代われ」と教官も大忙し。少しずつタイミングを合わせ、うまく進むようになると掛け声も弾んだ。
定時の教務を終えた後も不得意分野の克服に自主的に励み、掃除や洗濯、アイロンがけをこなす。消灯時刻の午後10時を迎えると慌ただしい一日が終わる。
■「しんどい」本音
活動の合間、学生や教官に思いを聞いた。もともと自衛隊に関心があった大谷内昂介さん(23)=大村市出身=は県内の大学を卒業後に入隊。「自衛官が東日本大震災の被災者に護衛艦の風呂を貸したり、音楽を聞かせたりしている姿を見て間違いないと思った」と志望動機を語る。迫田裕樹さん(18)=佐世保市出身=は「船乗りとして尽力したい」などと将来の目標を明確に持つ。
喫煙所で訓練生に話し掛けると「しんどい」「教官は怖い」とつい本音も。それでも教官には交換日記で恋愛などについて相談し、休日は外出して楽しむ。長崎市で社会人を経て入隊した同期リーダー格の遠藤博己さん(26)は「オンとオフの切り替えは大半ができていると感じる」。
一方、教官は「日に日にたくましさを増し、入隊前と見違えるほど顔、体つきが違う」と訓練生の成長ぶりについて口をそろえる。訓練は五つの分隊と分隊内の複数の班ごとに行うが、共同責任を課し、分隊や班対抗の競技大会を定期的に実施することで、団結力やモチベーションの向上を狙うという。訓練では体力がある者を中心に同期で励まし合う姿が目についた。
小梅司令は「東日本大震災をきっかけに覚悟を持って入隊している人が今年は多い。8月に巣立っていくころは、立派になった姿に私たちも感動するでしょう」と笑顔で話した。
◆ズーム/海上自衛隊佐世保教育隊
全国に4カ所ある海自教育隊の一つ。本年度は九州出身を中心とした男性297人が入隊。入隊時から2等海士の一般海曹候補生と、任期付き(更新制)採用で7月から2等海士になることができる自衛官候補生がいる。訓練や適性検査、面接など受けた後、全国の各部隊に配属される。
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