【産経】
【海外事件簿】
日本の美人外交官と公費で密会? 台湾“イケメン外交官”の不倫騒動
2011.8.14 11:49
中国との関係改善を進めつつも、一方では東日本大震災の義援金が7月下旬で約177億円に達し、日本との絆が太い台湾。そんな台湾外交部(外務省に相当)の“イケメン高官”が、駐フィジー代表処(大使館に相当)の代表(大使に相当)だった際、同じく在フィジー日本大使館に勤務していた30代の清楚な日本人美人外交官と密会を重ね、食事代や電話代などで公費を乱用した、との疑惑が浮上。同高官は疑惑を完全否定したものの、結局は代表を辞任し、外交部も“過度な日台友好疑惑”を認めたかっこうで停職処分に。ついには発足したばかりの“汚職摘発庁”廉政署と、監察院に公金横領などの調査を委ねる騒ぎとなって…(台北 吉村剛史)
不倫疑惑噴出
日本の美人外交官との不適切な関係がもとで代表職を辞任し、現在、停職と基本給半額の減給処分となっているのは、外交部秘書処代表回部弁事の秦日新氏(54)。
疑惑は野党・民主進歩党(民進党)の高志鵬立法委員(国会議員に相当)が6月27、28日の2日にわたって報道陣に公表したのが発端だ。
高委員は「秦氏は昨年7月以降密会や食事を公費で重ね、電話の通話記録も多い。度々その日本人女性を公邸に招き入れており、女性の帰国後は日本にまで会いに行っている。現地在住の日本人も台湾人も非常に少なく、フィジーでは周知の事実」と指摘した。
これを受けて台湾の各有力紙も一斉に疑惑を報道、テレビ各局もかなりの時間を割いて検証した。
疑惑の主人公となった秦氏は、連絡業務で台北にいたため、各社の報道を受けて急きょ記者会見し、「特別な関係ではない。また、規定外の公費も使っていない」と釈明に追われた。
会見での代表の説明によると「彼女とは2009年にフィジーで開催された国際フォーラムで知り合った」という。
頻繁に会っていた、という指摘に対し、「彼女は帰国を控えてフィジー情勢のリポートを書くために、時々私の話を聞きにきていただけ。応じたのは、あくまでも職務上の交際で、それにともなう連絡等に使用した公費も規定の範囲内だった」としている。
また今年5月に休暇で日本に行った際にもデートをしていた、との指摘には「会ったのは事実だが、日本に行った目的は電気製品の購入で、彼女には友人として買い物につきあってもらっただけだ」と説明。会見後は早々に姿を隠した。
高官と女性の素顔
「蘋果日報」をはじめ、「自由時報」「中国時報」「聯合報」など台湾の有力各紙によると、秦氏は06年、駐ニュージーランド代表だった当時、領収書を偽造してワインを大量に購入した、との疑惑で検察から起訴されたが、1、2審とも無罪判決を受けた。
06年6月にニュージーランド代表から、駐フィジー代表処顧問に異動になったものの、10年10月に同代表処の代表に昇任している。妻子を台北に残しての単身赴任で、娘は台湾大学13美人の1人としても知られている。
一方、秦氏のお相手として噂になった在フィジー日本大使館勤務の30代の日本人女性外交官は独身といい、現地では「誰もが知っているほどの評判の清楚な美人だった」という。
日本の外務省によると、確かにこの女性は2009年4月から2年間の任期付き職員(三等書記官)として同大使館で勤務していた記録がある。しかし、任期の満了にともなって今年3月末に帰国し、退職した。
その後については不明だが、台湾では「妊娠している」とのウワサも流れており、「真偽はともかく、尋常の関係でないことを状況が証明している」と報道などで指摘されている。
「帰国を控えて…」という状況は、秦氏の説明通りだが、実際にどのようなリポートを提出したのかも不明だ。
騒動の果てに
しかし、この公費不倫疑惑は、疑惑のままではとどまらなかった。
その後の高氏の指摘で、秦氏が公費で女性に高額な真珠のネックレスを贈っていた疑惑も浮上。「もみ消しをはかっているのではないか」との指摘を受けた外交部では、本格的な聞き取り調査などを展開し、秦氏は公費で女性と2人だけの食事を20回以上行っていたことを突き止めた。
また、女性との電話が1カ月で50回以上に達していたことや、女性が公邸に度々招かれて宿泊していた事実も警備記録などから確認。さらには単身赴任の秦氏の官邸の浴室の修理にあたった秘書が、排水口に女性の長い毛髪がつまっているのを確認したことも明らかになっている。
高氏が指摘した真珠のネックレスも、交際費6000ドル(約47万円)を投じて購入していたことが発覚。秦氏は「フィジー高官夫人に贈るつもりですべて保管していた」としたが、外交部の調査では、購入されたネックレス4つのうち、ひとつが明らかに他の3つと形状が違い、後で再購入して補填(ほてん)された疑惑も。
また秦氏は単身赴任にもかかわらず帯同家族手当も総額で60万台湾元(約162万円)以上も受けとっていた事実や、秦氏の台北滞在中、日本に戻った女性との国際通話記録が5日間で7000台湾元(約1万9000円)にのぼっていたことも確認された。
こうした中、秦氏は数々の疑惑に対し「女性とは仕事以外の関係は一切ない」と完全否定しつつも「個人的な問題で世間を騒がせ、外交部のイメージを損なった」として駐フィジー代表代表の辞職願を提出し、外交部は7月21日、辞表を受理した。
その後、外交部では部内調査を精査した結果、秦氏の行為にも問題があったことを認め、27日、秦氏の停職処分と、給与は基本給の半額とし、発足したばかりの廉政署と、監察院に対し、公金横領と日本人女性との外交の領域を越えた不適切な関係について調査を委ね、台北地方検察署は調査を開始。台湾各紙は、起訴や懲戒免職の可能性も指摘している。
騒動の余波か、秦氏の駐ニュージーランド代表時代の領収書偽造問題は、最高裁が高裁に差し戻していたが、8月12日、公務員登載公文書不実罪で懲役6カ月(実刑)の逆転有罪判決が下され、控訴が注目される事態となった。
背景に浮かぶ影
秦氏の領収書偽造疑惑が発覚したのは民進党政権時代。当時、駐フィジー代表処顧問に異動し、2008年の馬英九政権発足後の、10年10月に同代表処の代表に返り咲いた経歴や、今回、野党議員からスキャンダルが暴露されたことでもわかるように、秦氏は与党・中国民党(国民党)中枢に近い外交部高官とされている。
今回、外交部が監察院とともに調査を委ねた廉政署は、今年7月20日、法務部(法務省に相当)が、公務員の汚職を専門に摘発する官庁として発足させたばかりで、そもそも国民党主席の馬英九総統が、香港やシンガポールの事例を参考に、トップダウンで設置を決めた機関だ。
当初は総統選が行われる来年1月に発足の予定だったが、半年前倒しで発足された背景は、再選をめざす馬総統が早期に実績アピールを狙ったため、と目されている。
その最初に注目される事案が、秦氏の問題とは、何とも皮肉な結果となったわけだが、台湾のマスコミ関係者の間には「この騒動の水面下には政争だけでなく、省庁間の争いの気配が濃厚に感じられる」との異論も根強い。
廉政署は独自の捜査権を持ち、公務員だけでなく、総統や立法委員(国会議員に相当)など政治家も取り締まりの対象としている機関だが、検察や法務部調査局の捜査機関と機能が重複するため、無駄を指摘する声や、独立した組織でないため、捜査の中立性を疑う意見もある。
事実、最高検に置かれた特偵組(特捜部)の中からは「これは第2特偵組ではないのか」との疑問や反発が漏れていた、と指摘する関係者も。
秦氏の不倫騒動が浮上した直後の6月30日には李登輝元総統が外交機密をシンクタンクなどに流用したとして、特偵組に起訴され、李氏の応援を得ている野党側が「この時期の起訴は政治的意図を感じる」との疑念を示す中、馬総統は「私は就任以来、司法の独立を尊重してきた」と説明に追われる事態となった。
一部消息筋は「あくまでも推測」としながらも、「単純に政争とみるよりは、功をあせった政治が産み出した省庁間の争いに、逆に政治が巻き込まれた可能性もある」と指摘している。
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