【日経】2012/2/14 0:00
インドネシア、海・空軍増強 軍事バランス影響も
【ジャカルタ=野沢康二】インドネシアが急速な経済成長を背景に、域内大国として防衛装備の近代化と兵器開発能力の強化に動き出した。手薄だった海軍と空軍の装備を充実させるほか、欧州航空防衛大手EADS製の軍用機を今後現地で生産、韓国や中国とも戦闘機やミサイルの共同開発を進める。アジア3位の人口と広大な領域を誇るインドネシアの軍事力増強は周辺国を刺激し、アジアの軍事バランスに影響を及ぼしかねないと懸念の声も出始めた。
インドネシア国防省はこのほど、韓国製潜水艦や駆逐艦、対潜ヘリ、ロシアのスホイ戦闘機、EADS製大型ヘリ、大型戦車などを2014年までに購入する計画を明らかにした。先に公表した米国からのF16戦闘機の受け入れも含め、総額150兆ルピア(約1兆3千億円)を充てる。
◆南シナ海安定めざす インドネシア国軍の装備は従来、国内の治安維持に対応する陸軍中心だった。しかし治安が安定する一方、南シナ海では中国とベトナムなど東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国との対立が激化。インドネシアは域内大国として「国外からの脅威に対応し、地域安定に貢献できる態勢を整える」(元国軍上層部)ため海軍と空軍の装備増強を決めた。
技術協力では国営航空機メーカー、ディルガンタラ・インドネシア(DI)がEADS防衛部門に部品を提供していた関係を拡充。EADSの輸送機「C295」を14年にも国内生産する。民間機の共同開発・生産も目指す。DIのブディ・サントソ社長は「最新技術の提供を受け開発力を強化できる」と期待する。
韓国の次期主力戦闘機「KFX」開発にも参加。レーダーで捕捉されにくいステルス技術を導入する予定で、インドネシアは開発費の2割相当の16億ドル(約1200億円)を負担する。中国との協力では対艦ミサイル「C―802」を現地生産する計画だ。
インドネシアが開発力向上を狙う背景には「1999年から05年まで人権侵害を理由に米国に武器禁輸措置を取られた苦い経験がある」(ポス・フタバラト国防省防衛装備局長)。国内政治経済の混乱もあり装備の近代化が大幅に遅れた。
ユドヨノ大統領は防衛装備拡充などは「自国の防衛政策を実行するための最低限の態勢づくり」と強調する。だが、06年に24兆ルピアだった国防予算は11年には50兆ルピアと倍増、12年は60兆ルピア余りへ膨らんだ。海外の軍事関係者は「自衛目的と主張しても、近隣のインドやマレーシアなどが脅威を感じ軍拡競争をあおる可能性もある」と警戒する。
◆米中、関係強化競う インドネシアを巡って米国と中国がせめぎ合う構図も鮮明になってきた。中国は近年、ASEAN主要国の中で直接領有権問題を抱えていないインドネシアとの関係を重視。昨年6月には、中国人民解放軍がインドネシア国軍と初の特殊部隊の合同演習を実施し、周辺国を驚かせた。武器の共同生産や技術移転では生産コスト引き下げも狙う。
米国も中古のF16戦闘機の供与などでインドネシアのつなぎ留めに躍起だ。一方で、米国は昨年11月、インドネシアに近いオーストラリア・ダーウィンでの海兵隊約2500人の駐留を発表。インドネシアは神経をとがらせている
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