【産経】2012.1.21 01:30
サイバー部隊、反撃可能 自衛隊、百人態勢
日本国政府は、対処能力だけでなく、攻撃能力も有する陸海空3自衛隊の統合部隊「サイバー空間防衛隊」を平成25年度末に100人態勢で発足させる方針を固めた。各省庁や出先機関、防衛関連企業のシステムなどの防御も検討している。
他国からのサイバー攻撃を「武力攻撃」と認定、サイバー空間での「自衛権発動」に道を開けるよう法制面の整備も加速させる。
現行のサイバー攻撃対処部隊としては陸海空3自衛隊の統合部隊「指揮通信システム隊」(150人規模)があるが、自衛隊の指揮・通信ネットワークへのサイバー攻撃に対処するネットワーク運用隊は数十人にとどまっており、防御能力の強化が不可欠とされてきた。
サイバー空間防衛隊はシステム隊傘下に置く。当初は、自衛隊のネットワークのみの防御に限定した運用を想定していたが、昨年、三菱重工業など防衛関連企業や政府機関、国会へのサイバー攻撃が多発。情報を抜き取る「標的型メール」などの手口により、他の政府機関から防衛機密が流出する可能性もあるため、空間防衛隊を「政府の中枢組織」と位置づけ、防御範囲を拡大させる案が有力となってきた。
政府は、25年度予算案概算要求をまとめる24年8月までにサイバー空間防衛隊の防御対象の範囲を確定させる方針。
空間防衛隊は、自衛隊内で「サイバー戦争」を模した訓練も実施する。攻撃・防御の双方に分かれて訓練を実施するため、攻撃能力を保有することは不可欠。過去に攻撃されたコンピューターウイルスを攻撃手段として利用するだけでなく、新たなウイルスなどサイバー攻撃技術の開発も検討している。
攻撃手段保有に合わせ、他国からのサイバー攻撃を武力攻撃(有事)と認定する基準も策定する。現行の武力攻撃事態対処法で想定する攻撃目標や被害の規模を踏襲し、(1)攻撃手法がコンピューターウイルスや不正アクセス(2)重要インフラやライフラインに大規模な被害(3)国民の生命・財産を脅かす-の3要件が満たされれば、武力攻撃と認定する案が有力となっている。
■米英韓で先行
2009年7月に米韓両国の政府機関が波状攻撃を受けたことを受け、米軍は10年5月にサイバー部隊の運用を始めた。11年7月には、米政府ネットワークが攻撃されれば軍事報復を辞さず、同盟国への攻撃も米国への攻撃とみなすサイバー戦略を公表した。
英国も10年10月、国防省に国防サイバー作戦グループの新設を決定。韓国も10年1月、国防情報本部にサイバー司令部を創設した。
国際法でサイバー戦争の定義は不明確だが、国家による重大な被害を及ぼすものを武力攻撃と認定すべきだとの意見が主流となりつつある。政府は米政府と連携し、武力攻撃の認定基準や行動規範の策定を主導する方針だが、当事者の特定が難しいことなどが「自衛権発動」のネックになるとの見方もある。
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