2011年11月25日金曜日

『さいごの色街 飛田』(筑摩書房)井上理津子




 飛田新地料理組合 156軒(大阪市西成区山王3丁目一帯)

さいごの色街 飛田
井上 理津子 著

取材拒否の街に挑んだ12年
衝撃のノンフィクション!
遊郭の名残りをとどめる大阪・飛田。社会のあらゆる矛盾を飲み込む貪欲で多面的な街に、なぜ人々は生きるのか? 長期取材をもとにした迫真のノンフィクション。シリーズ:単行本
定価:2,100円(税込)
刊行日: 2011/10/20

著者について 井上 理津子(56)
1955年、奈良市生まれ。
京都女子大学短期大学部国文科卒業。
タウン誌 編集部勤務を経て、1985年からフリーライター。
人物インタビューやルポを中心に活動中。
著書に『産婆さん、50年やりました』『大阪下町酒場列伝』『大阪名物』(共著)ほか。生活環境文化研究所特別研究員。旅行ペンクラブ会員。

遊廓の名残りをとどめる、大阪・飛田。社会のあらゆる矛盾をのみ込む貪欲で多面的なこの街に、人はなぜ引き寄せられるのか!取材拒否の街に挑んだ12年、衝撃のノンフィクション。
第1章 飛田に行きましたか
第2章 飛田を歩く
第3章 飛田のはじまり
第4章 住めば天国、出たら地獄―戦後の飛田
第5章 飛田に生きる
第6章 飛田で働く人たち


【週刊ポスト】2011年12月2日号

報告 山藤章一郎

 大阪通天閣よりさらに南、西成区山王3丁目一帯に、飛田新地という旧遊郭がある。

 いまも見世に坐った20歳ほどの娘が通りを行く客にほほえむ。隣りに、「にいちゃん、寄ってって」と声を嗄らす婆さんがつく。声につられて店の2階に揚がる。薄い布団が敷いてある。美形は全部脱いで、男を楽しませる。

売春が生業の地域である。15分1万2000円。組合で値段は統一されている。

『さいごの色街 飛田』(筑摩書房)のルポ取材で12年通った著者の井上理津子は、2009年の秋、この組合会館の応接室に通されて、「おやっ」と思うものを目にした。

一枚の写真が飾られていた。茶髪の男と組合長が並んでいる。茶髪の男性は弁護士;橋下徹

「そうや。組合の顧問弁護士。一回、講演に来てもろた時に写したやつやな」と幹部〉

組合幹部の名札とともに〈橋下事務所〉という札もかかっていた。講演だけではなく、すでにこのころ、橋下は〈飛田新地料理組合〉の顧問弁護士だった。


【毎日】2011年11月13日 東京朝刊
今週の本棚・新刊:『さいごの色街 飛田』=井上理津子・著
 ◇『さいごの色街 飛田(とびた)』
 (筑摩書房・2100円)

 今も「料亭」で事実上の管理売春がされていると言われる街、大阪市の飛田を11年間取材したルポルタージュ。目と鼻の先にある日雇い労働者の街、釜ケ崎についてはたくさんの本が出ているが、飛田の内情を詳しく取材したルポは、評者の知る限りでは初めてだ。

 著者とかなり親しくなった関係者でも、核心的な話には恐ろしく口が重くなる。いろいろな意味で、「そっとしておいてほしいんや」と街全体が言っている。それでも著者は、働く女性や経営者がそれぞれ懸命に生きる姿をくっきり描いた。その懸命さが抑圧や貧困、差別などと密接に絡み合っていることをも……。橋下徹・前大阪府知事が、かつて業者組合の顧問弁護士を務めていたことなど、興味深い挿話も多数。(生)

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