2011年10月17日月曜日

【タイ王国】 ワニ園のワニが多数、逃げ出す




(中)タイのアユタヤ県にあるホンダの工場は、洪水で孤立した(10日、ロイター)

(下)タイ地理情報宇宙開発機構のホームページ上にある洪水モニタリングシステム。赤は今月6~10日に冠水した地域、青はそれ以前に冠水した地域(日本語版のグーグル地図に表示)


 〇_タイ王国(10月16日時点)
 大雨洪水被害s死亡者 297名


s〇_タイ工業団地公社(IEAT)
sアユタヤ県…工業団地五箇所
 日系の被害企業は、約320社

●ファクトリー・ランド工業団地 16日進水、水深1メートル 100社、日系5社

●ロジャナ工業団地 ホンダ、ニコン 15日夜から浸水

●バンパイン工業団地 約80社、日系企業が30社

●ハイテク 水位4メートル 16日午前8時時点 キャノン

●サハラタナナコン

 ※バンコク
ラークラバン工業団地
バンチャン工業団地
ジェモポリス工業団地

 ※中部パトゥムタニ県
ナワナコン工業団地(パトゥムタニ)
 地元住民、兵士らが土のうを積み増す作業を続け、16日午前の時点では団地内への浸水を回避している。


【NHK】10月17日 5時48分
 タイ洪水 多数のワニ逃げ出す

 タイ政府は、水につかった地域にあるワニ園からワニが逃げ出すケースが相次いでいて注意を呼びかけています。

地元の新聞によりますと、中部のアユタヤでは、複数のワニ園で水があふれるなどしたためワニが逃げ出し、その数は、およそ100匹に上るとみられています。一部の住民の間には不安も広がっていますが、政府は、逃げ出したワニは野生のワニほど危険ではないとして、住民に落ち着いて対応するよう指示するとともに注意を呼びかけているということです。そして、生きたまま捕獲した場合には1000バーツ(約2500円)の懸賞金を出すほか、情報提供のための専用電話も設けたということです。

アユタヤでは、水につかった住宅のそばなどでワニが見つかり、ボランティアの男性らが口や足をロープで縛り保護する様子が見られました。タイでは、観光客向けなどに多くのワニ園があり、今回の洪水で、ほかの地域でも増水が原因でワニが逃げ出したことが報告されているということです。


【共同通信】2011/10/16 23:05
 ワニ100匹逃走、懸賞金 タイ洪水、トラやヘビも?

【バンコク共同】タイ中部アユタヤ県で、100匹余りのワニが逃げ出す騒ぎがあり、保健当局が人的被害が出る恐れがあるとして、生け捕りを条件に1匹当たり1千バーツ(約2500円)の賞金を懸け、情報提供と注意を呼び掛けている。地元メディアが16日報じた。

 環境当局は、洪水被害の拡大で、ワニのほか、トラやヘビも逃げ出している可能性があるとして、ホットラインを設置、住民に情報提供を求めているほか、捕獲チームを結成し捜索を始めた。

 ワニは観光客向けや、わに革用などに飼育されており、養殖していた農家が洪水で避難している間に逃げ始めたという。



【日経】2011/10/17 7:00
 タイ洪水が浮き彫りにしたインドシナの森林・環境破壊

 11月下旬から南アフリカのダーバンで開催される第17回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP17)。2012年12月末に京都議定書に基づく温暖化ガスの削減期間が切れるのを控え、13年以降の削減目標設定で反目し合う先進国と途上国の意見をいかにまとめるかが焦点になる。途上国側が、中国や米国を含む主要排出国に一段の削減対策を迫る材料になりそうな事態が今月、タイで起きた。

 世界遺産として知られるタイ有数の観光地で、同国製造業の一大中心地でもあるアユタヤを飲み込んだ大洪水だ。同国に進出している日本メーカーが構築したサプライチェーンをマヒさせた。

 タイには大小合わせて7000社近い日系企業が進出している。特に洪水被害の激しいアユタヤ市内の工業団地にはホンダ、キヤノン、ニコン、ソニーなどが拠点を構え、部品から完成品までをつくり上げる産業ピラミッドを完成させている。

 進出企業からは「洪水がいつ引くか先が見えない。東日本大震災より影響は深刻だ」との悲鳴があがる。タイでは雨期明けが近い10月ごろに雨量が急激に増え、洪水は毎年起こるが、規模は限定的だ。工業団地が冠水することは極めて珍しく、立地を選定する日本企業にとっても想定外だった。

 だが、今年の洪水は「過去数十年で最悪」(タイ気象局)。6~7月から大雨が多く、例年ならインドシナ半島に接近する前に勢力が弱まるはずの台風が幾つも上陸して猛威を振るった。タイ地理情報宇宙開発機構(GISTDA)のホームページで洪水監視システムを見ると、同国東北部や北部のスコータイやピサヌロクから首都バンコク北辺まで、山間地を除いて洪水被害が広がっているのが分かる。

 だが、単に「異常気象のせい」(タイのインラック首相)では片付けられない面もある。タイを中心にインドシナ各国で経済成長が進むなか、急激な森林破壊や農村から都市への人口移動、インフラ開発などが大規模洪水の発生の要因の一つになった可能性が指摘されている。

 その中でも最も影響が大きいとみられるのは熱帯雨林の急速な減少だ。これは森林の保水能力の低下に直結する。経済成長につれ国土開発が進み、タイの森林は東南アジア諸国連合(ASEAN)の中でも特に速いペースで減少した。

 国連食糧農業機関(FAO)の調べによると、タイの森林は販売目的の伐採や開発などで過去20~30年間で急速に失われた。1980年から90年までの10年間の森林減少率は年率3.3%とフィリピンに並びASEAN最大で、90年の林野率(国土に占める林野の割合)は25%まで低落した。現状では一段と減少している可能性が大きい。

さらに、森林減少がタイの北部で国境を接するミャンマーやラオスなどや中国南西部を含む広域な範囲に及ぶのが問題の根深い点だ。タイ、ミャンマー、ラオスの山間部では少数民族による焼き畑農業が今も続いている。3月になるとタイ北部のチェンマイ周辺は恒常的に焼き畑の煙で覆われるほどだ。

 FAOのアジア・太平洋地域森林資源官だった樫尾昌秀氏の調査によれば、ミャンマーでは年間40万ヘクタールの森林が失われている。かつては15~20年かけて山の一部を順番に焼いていたが、今では少数民族の生活にも現金収入が欠かせなくなり、5~10年など短い周期で焼いていくケースが増えて山が荒れているという。一方で植林・造林のペースは遅く、世界に誇るインドシナ半島の熱帯雨林は急ピッチで失われつつある。

 タイ・ラオス国境を流れ、チベット高原に源流を発する大河、メコン川を筆頭に、インドシナ半島には国境をまたぐ大きな河川が随所にある。半島一帯に大雨が降ると下流に集まる雨水は莫大となる。

 メコン川上流の中国国内にはダムが2カ所あり、さらに新たな建設が進んでいる。ただ、メコン川は下流域で流れ込んでくる支流も多く、上流のダムは必ずしも洪水の抑止につながっていない。さらに生態系にも影響を与えると問題視されている。

 今回の洪水で、支流を多く持つチャオプラヤ川なども水量は上昇し続けており、アユタヤやバンコクといった下流域にある都市では高い水位が長く続きそうだ。アユタヤでは、ホンダの四輪車工場があるロジャナ工業団地で浸水の深さが最大4メートルに達したもようで、通行可能になるまで1カ月はかかるとみられている。完全な操業再開までには、さらに時間がかかりそうだ。

 タイの大洪水は、大規模なハリケーンや干ばつの頻発などとともに「気候変動リスク」の実例として、途上国が先進国などに温暖化対策の加速を求める材料になる可能性がある。先進国が省エネや再生可能エネルギーの利用技術を駆使して温暖化ガス削減に取り組まなければならないのは当然だ。

 一方、大洪水は途上国側にも、二酸化炭素(CO2)の吸収源であり、洪水などの災害防止機能も持つ森林の維持と経済成長のバランスをどう取っていくかという課題があることを浮き彫りにした。同時に、タイに進出した日本企業が洪水で受けた被害を見ればわかるように、途上国の森林対策は先進国にも無縁ではない。COP17では省エネ技術や資金の移転や、排出量取引ばかりでなく、森林保全技術で先進国と途上国がどう協力していけるかというテーマも注目されそうだ。

(産業部 三河正久)


【日経】2011/10/17 7:01
 タイ洪水に気をもむインドネシアの日系企業
アジアBiz新潮流 ジャカルタ支局・野沢康二

 インドネシアに進出する日系メーカー幹部はここ数日、落ち着くことができない。部品の供給拠点となっているタイの大洪水で現地工場の生産が次々と止まっており、東日本大震災後に起きた部品供給の停滞のように、インドネシア生産が再び影響を受けるのではないかと戦々恐々としているのだ。

 「本当に心配ないかと聞かれると、ないとは言い切れない」。トヨタ自動車の現地生産会社幹部は不安げだ。タイの洪水によるトヨタ現地工場の生産停止を受け、調達先をあわてて点検したところ、当面は部品の供給が滞ることはないとの結論が出た。しかし、これはあくまでもトヨタに直接部品を納める1次下請けの話だ。1次に部品や素材を供給する2次メーカーや、さらに3次以下についてはほとんど把握できていない。

 トヨタと同様にタイ工場の生産が止まったいすゞ自動車のインドネシア法人幹部も「在庫などで当面の部品は確保できたが、今後何が起こるかは予想できない」と漏らす。やはり現地に工場を持つ日系家電メーカーも生産への影響を注視する。

 東日本大震災と福島第1原子力発電所の事故では、被災地で生産していた電子部品を中心に供給が世界的に滞り、トヨタをはじめインドネシアに展開する日系メーカーも次々に生産の大幅減に追い込まれた。各社は影響がどこまで広がるのかをなかなかつかめず、右往左往した。その記憶がよみがえる。

 日本の自動車各社は「世界最適調達」などという掛け声の下、部品を最も安く効率的に生産できるところから調達する国境をまたいだ複雑なネットワークを作り上げ高い競争力を維持してきた。インドネシア生産車の中で現地調達率が高いトヨタのミニバン「キジャン・イノーバ」でさえ、部品産業が集まるタイからの部品が10~15%を占める。

 一方、韓国の現代自動車インドネシア法人は「タイからの部品供給はなく、問題は起きていない」(同社広報)という。自国からの部品が多いためのようで、日系メーカーとは一線を画す。

 日本企業では、東日本大震災以後、生産・調達の一極集中を防ぐ努力が進みつつある。しかし、東南アジア諸国連合(ASEAN)内で作り上げてきた複雑なネットワークを単純にしようという議論は出ていない。

 日系大手家電メーカーの幹部は「どの国で災害が起きても、影響がないか調べなければ仕事にならない時代だ」とつぶやく。メーカー各社は、生産をいつもスムーズにするために、様々なニュースに反応する金融市場関係者のように、世界の災害情報に対してアンテナを張り機敏に行動することが求められている。

0 件のコメント: