2011年10月14日金曜日

シリア デモ活動に限界…内戦突入の恐れ 反体制派、武装闘争転換の兆し

産経新聞 10月14日(金)7時55分
シリア デモ活動に限界…内戦突入の恐れ 反体制派、武装闘争転換の兆し

【カイロ=大内清】バッシャール・アサド政権による弾圧を受けるシリアの反体制派で、デモ中心の活動に限界を訴える一部グループが武装闘争路線に転換したもようだ。幹部の1人が証言した。ただ、在外反体制派組織「シリア国民評議会(SNC)」はあくまで「平和的な政権打倒」を目指すとし、現時点では強硬路線から距離を置く。武装闘争に参集した勢力の規模など不透明な部分も多い。

 「人が死にすぎた。もはや武力を通じてしか圧政は倒せない」

 スウェーデン在住の反体制派で軍務経験もあるムハンマド・ラハール氏(54)は産経新聞の電話取材にこう語り、自身が率いるグループが「9月下旬からシリア国内での武装闘争を開始した」と明かした。武器は主に、国内の闇市場で調達しているという。

 アサド政権はこれまで、市民にまぎれ込んだ「武装集団」が軍や市民を攻撃しているとしてデモ弾圧を正当化してきたが、デモ隊側からの本格的な武器使用は確認されていなかった。

 賛同する勢力についてラハール氏は「数千人単位」と語るが、実際に武装蜂起がどの程度拡大しているかは、シリア政府が国内取材を厳しく制限していることもあり不明だ。SNCに参加せず、強硬路線を唱える同氏には、「結果的に政権側の武力行使を正当化させてしまう」として他の反体制派からの批判も多い。

 ただ、複数のSNC関係者は「ひそかにシリアからトルコへ越境し武器を調達している者がいるのも確か」と言明。3月のデモ発生以来、当局の弾圧で数千人が死亡したとされる中、デモによる政権打倒は困難との考えも広がっている。

 一方、シリアでは軍部隊の離反も続いている。今月上旬には、これまでで最高位のリヤド・アサアド大佐が部隊を率いてトルコへ脱出、同大佐によれば、シリア正規軍約32万人のうち、北・中部の部隊を中心に1万人前後がすでに政権の指揮下を離れているという。

 こうした中、SNCに加わる反体制派では最大規模を誇る同国のイスラム原理主義組織ムスリム同胞団ナンバー2、ムハンマド・ファルーク・タイフール氏(66)は訪問先のエジプトで産経新聞の取材に対し、武装闘争には「結果的により多くの人が犠牲になる」と強い懸念を示した。

 一方で同氏は、アサアド大佐らと連絡を取り合っていることを認めた上で、将来的にSNCに軍事部門を設けて大佐を責任者に据える構想も明らかにした。武装闘争の是非についてSNCも立場を決めかねているとみられる。ただ、離反兵士も巻き込んで反体制派が政権側と本格衝突すれば、内戦状態に突入する可能性も捨てきれない。

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