2011年9月15日木曜日

寮に一人残り勉強 十津川の高3、自衛隊採用めざし

【産経】2011.9.15 14:16

 台風12号による豪雨で道路網が寸断され、寮生約70人が一時孤立した奈良県十津川村の県立十津川高校で、今も寮にたった1人で残る生徒がいる。

学校再開のめどが立たず寮生はみんな村外などの自宅に戻ったが、同高3年の増谷修二君(18)の実家は、土砂が川をせき止めてできた「土砂崩れダム」の存在が確認された同県野迫川(のせがわ)村。実家の家族はすでに避難し、いつ戻れるかもわからない状況だが、今は17日に迫った陸上自衛隊の採用試験に向け、黙々と机に向かっている。
 全校生徒159人のうち約半数が暮らす寮に3日夜、近くのダムの水位上昇を告げる放送が流れた。公民館などに避難し、寮に戻ったのは6日朝だった。電話も通じるようになり、実家と連絡が取れた寮生は親元へ戻ることになった。

 増谷君は実家と連絡がつかなかったが、「停電しているから電話はつながらないだろう」と思い、帰宅する寮生を見送っていた。

 その後、母親から電話が入り、今は兄の住む同県大淀町に避難しているという。野迫川村でも大規模な土砂崩れが起き、実家近くでは大きな地割れも見つかり、また暮らせるのか分からないと聞かされた。

 母親は「あんたも早くこっちに来たら」と心配するが、夢だった自衛隊の採用試験が迫っている。寮に残っているのは自分一人だが、勉強の面倒や世話をしてくれる先生たちがそばにいる。母親には「試験が終わったらそっちに行くよ」と告げた。

 小学生時代、災害現場で活動する自衛隊員の姿をテレビで見て「かっこいい」と素直に感じ、自衛隊員を目指すようになった。

男ばかりの6人兄弟のうち四男の兄(24)は自衛官だ。増谷君は今夏、東日本大震災の復興ボランティアで岩手県陸前高田市を訪れ、自衛隊を目指す気持ちを新たにして寮に戻った。その直後の台風だった。
 今は行方不明者の捜索や物資運搬のため、村で活動する多くの自衛隊員を見かける。「自分もいつか、困っている人たちの力になりたい」。実家や家族、学校のことを考えると不安になる。しかし、将来は多くの人たちの力になれるよう、被災した村から採用試験に臨もうとしている。

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