2011年7月11日月曜日

【唐津市】 岸本組 代表取締役 岸本剛

(株)岸本組 玄海原発に依存した企業の実態(1)
2011年6月28日 07:00

<過去、売上高100億円を超えた地場有数の建設業者>

 (株)岸本組(唐津市)の業歴は古く、唐津地区において創業者の岸本八十吉氏が土木工事業を目的に事業を開始したのが1911年6月(明治44年)。それから約40年後の52年5月に法人化をし、現在の商号となる。初代代表に創業者の岸本八十吉氏が就任、同社の基礎を固めた。

 この時期から同社の販路拡大路線が開始される。63年3月の壱岐営業所開設を皮切りに76年5月に福岡営業所、80年4月に熊本営業所、83年3月唐津営業所、86年2月鹿島出張所、89年8月武雄営業所、94年9月には長崎県の鷹島出張所などを開設し、唐津地区内だけでなく長崎、福岡、熊本県にまたがるなど北部九州を中心に営業基盤を拡大。土木工事での官庁からの公共工事をベースとしてマンション関連などの建築工事を手掛けるなど業容も拡大した。

 手元の資料によると、97年4月期には売上高127億7,871万円、経常利益6億1,730万円、当期利益は3億2,206万円を確保、佐賀県を代表する建設工事業者となった。しかし、その躍進も長続きはしなかった。


(株)岸本組 玄海原発に依存した企業の実態(2)
企業
2011年6月29日 17:10
<エリアと事業規模の縮小へ>
 1997年4月期には、売上高127億7,871万円、経常利益6億1,730万円、当期利益は3億2,206万円を確保するなど、佐賀県の有数の建設業者となった(株)岸本組だが、バブル崩壊の影響などから市場が悪化、徐々に事業規模が収縮していく。翌98年4月期には売上高は103億193万円、99年には100億円を割る86億8,210万円となっていく。この頃は3~4億円の当期利益を確保しており、減収しても高い利益面は確立されていたようだ。

 しかし、近年3期分の数字を見てみると、2008年4月期で売上高28億5,052万円、営業損益段階で赤字に転落して▲1億7,027万円。09年4月期も売上高31億8,904万円、営業損益段階で▲1億3,589万円と2期連続して赤字を露呈。100億円を越えていた同社の過去の威光はすでにない。ただ、過去に蓄えた内部留保は厚く、未だに無借金経営はなされている。   

規模縮小と平行して事業拠点も撤退を行ない、各拠点に構えていたほとんど営業の出先も撤退し、現在では本社と佐賀市支店と玄海町支店のみとなる。ただ玄海町の営業拠点だけは08年12月に玄海町営業所を支店に昇格させるなど、玄海町にはさらなる営業強化を図るものとみられる。

 裏を返せば、玄海町からの原子力事業の恩恵の比率をもっと高めるためとも考えられる。09年7月には建設業許可も大臣許可から佐賀県知事許可に変更しており、今後も公共工事、とくに原発マネーの恩恵を受けようとの算段なのか。民間からの大口受注は九州電力とその関係会社から。なおさら原発関連事業の岸本組というイメージは強まった。

 3月11日以降の福島第一原発事故で原発に対する風当たりが増加した。そのため玄海原子力発電2、3号機の運転再開が論争を呼んでいる。玄海町の岸本英雄町長はメディアで度々目にするようになり、それに伴い同社に関してNET-IBへの問い合せが多くなってきた。
(つづく)
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(株)岸本組 玄海原発に依存した企業の実態(3)
企業
2011年7月 5日 12:19
<高い公共工事の受注比率>
 過去の高い収益面をもっていたことで厚い内部留保をもつ同社だが、2008、09年4月期の業績は落ち込み2期連続の赤字となった。しかし、老舗の意地か、はたまた原子力関連事業に傾注したのか10年4月期の売上高は回復基調となり41億5,775万円となった。役員報酬などの削減などによるコストの圧縮も進み、営業損益段階で3,320万円を計上。6,109万円などの家賃収入も寄与してからか、経常損益段階で8,154万円の利益を確保するなど黒字に転換した。

 受注比率を見ると、10年4月期における土木工事の受注上位は「佐賀県東松浦郡玄海町発注の平成20・21年度 北部浄化センター建設工事」(1億7,321万円)、「九州電力(株)玄海原子力発電所の温室熱供給設備設置工事のうちの土木工事」(1億5,765万円)であった。そのほかの受注先として国土交通省、唐津市などの名があがっている。建築工事の受注は「唐津農業協同組合(玄海町)のJAからつのいちご共同選果施設建築(3億3,800万円)」となっている。

 10年4月期の完工高においては、公共工事受注金額は23億0547万円、民間元請受注金額は18億0352万円、合計41億5,638万円となり、元請受注の比率は約98%となり、かない高い数値を誇っている。では、赤字となった08、09年の4月期の2期はどうなっていたのか―。
(つづく)
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(株)岸本組 玄海原発に依存した企業の実態(4)
企業
2011年7月 6日 16:23
<営業の強化先は>
 前回は2010年4月期において高い元請率について触れた。では大赤字に見舞われた08、09年4月期においての比率はどうなっているのだろう。下の表を見て頂きたい。10年4月期と明らかに違うのは、民間元請の比率は低く、下請受注の比率が高いことがわかる。
 08年4月期では、発注者の都合と営業不足で約18億円の受注を取りこぼし、随意契約などの受注約10億円ができなかったとしている。09年4月期は民間受注の大型案件となるマンションの約6億円、唐津警察署からの約3億円、厳木工業団地の工事約2億5,000万円が取れなかったようだ。同社としては「民間の受注が課題」を掲げていたが、裏を返せば九州電力などからの民間受注は得意であるが、競争が激しい一般からの受注はあまり得意ではないとの表れだろう。
 その後、同社の営業戦略は「最重要顧客=玄海町、九電、JA、唐津市への営業強化」へと代わっているのだ。つまり、10年4月期では、得意分野からの公共工事、民間元請の受注が増えたのではないだろうか。
 同社は赤字経営を連続して味わっている。過去に蓄えた厚い内部留保に支えられているとしても、限界はある。早急に結果を求めることと、効率の悪い一般の受注を省くとなれば、原子力政策を推進してきた玄海町や九州電力に受注先として求めていくのは必然。ひいては原子力マネー頼みの事業展開を加速してもおかしくはない。
(つづく)
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(株)岸本組 玄海原発に依存した企業の実態(5)
企業
2011年7月11日 09:17
<ツケがまわってきた>
 3月11日に起こった東北大震災に伴う福島第一原発事故は、人類が制御できると過信した原子力発電に対する考え方を改める機会となった。同事故に関する報道が連日行なわれ、日本中に放射能汚染への不安が広がっている。
 このため、玄海原子力発電2、3号機の再稼動に世論は慎重になっている。玄海町長の岸本英雄氏は、早々とメディアに対して稼動同意の立場を表明していた。だが、6日に九州電力の「やらせメール」事件が発覚。その直後岸本氏は稼動同意を「一旦撤回」した。現在、国会を始め論議を呼んでいるが、このまま稼動できないと潤沢な原子力マネーが地元に流れなくなる可能性が高く、原発利権組や玄海町は厳しい立場に立たされることになる。
 このままでは玄海町を始めとした官庁関係や、九電や関係会社の西日本プラントを重点的な営業先に挙げていた岸本組は原発関連の利権に携わることが出来なくなる。無借金経営、自己資本比率約70%、約24億円を有し月商約7カ月分の現金預金をもつなど固い経営基盤を持つ同社だが、玄海町や九電などからの原子力マネーが縮小傾向となると同社の屋台骨は揺らいでいくだろう。
 また、玄海町長との癒着構造が取り出されているのに加えて、九電以外の民間受注が不得意な同社にとっては、今後ますます逆風に晒されていくだろう。言い換えれば、過去に甘い利権を吸い続けたツケがまわってきたといえる。
(了)
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