2012年6月30日土曜日

【防衛省】 第54次 砕氷艦しらせ CH-101 搭載はなし

【産経】2012.6.29 07:41
昭和基地、ヘリ不足で一時閉鎖も懸念
[from Editor]

今秋、第54次隊を運ぶ海上自衛隊砕氷艦しらせに、物資輸送に不可欠な大型ヘリCH101が搭載されない恐れが出てきた。原因は故障や予算難。南極観測を指揮する国立極地研究所長白石和行は「最悪、越冬断念、昭和基地の一時閉鎖もありうる」と話す。

搭載ヘリは2機が基本。以前は3機のローテーションで定期修理や操縦訓練などを行っていたが、平成21年就役の新しらせでは2機に削減された。円滑な運用に2セットずつ必要なパーツも、予算難で予備部品保有率は40%にとどまっている。

就役直後の51、52次隊は大型ヘリ2機態勢だったが、昨秋出発の53次隊は初めて1機で極地へ。他の1機は定期修理で、54次隊で2機に戻る予定だった。しかし、6月に入って防衛省は定期修理中の機体のメーンギアボックスが故障したため「27年度末まで運用は1機」と報告。さらに南極から帰還した機体の整備で調達困難な部品が必要になると、「54次隊の大型ヘリはゼロ」と打ち明けた。

 問題の裏にはCH101導入に伴う事情も。

初代しらせ艦載ヘリと比べ実績が少なく運用に手探りの面があり、部品供給にも難がある。今回、壊れたギアボックスは受注生産になっており、修理が終わるまで3年かかるという。

第53次は昭和基地周辺の海氷は厚さ5メートルを超える異常事態が続き、今年1月、しらせは18年ぶりに21キロ手前で基地接岸を断念。しらせから基地のタンクへパイプで送る越冬燃料を大型ヘリ1機とソリで運んだが、輸送できたのは55%だけだった。越冬に必要な燃料は600キロリットル。54次越冬が始まる来年2月、1年分の蓄えが必要な昭和基地の備蓄燃料は、半年分の300キロリットルに減る。

 海氷は次の航海でも厚いとみられ、仮に接岸できないと、大型ヘリなしで越冬可能な燃料や物資の補給は絶望的。1機でも輸送能力と燃料備蓄量を考えると不安は残る。この問題は22日の南極地域観測統合推進本部総会で議論されたが具体策は示されなかった。

 白石所長は「大型ヘリ2機は観測継続の前提条件。『予算もなく故障したから1機かゼロ』ではなく2機確保の努力を」と訴える。南極観測の意義は大きい。観測隊員と自衛官が極地で不安なく働ける知恵を絞ってもらいたい。

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