2011年9月29日木曜日

中満泉さんに聞く

 南スーダンへの陸上自衛隊部隊の派遣検討で国連平和維持活動(PKO)に改めて注目が集まる。

 PKOを統括する国連平和維持活動局政策部長の中満泉さんに、PKOの今日的課題と日本への期待、また「アラブの春」や東アフリカの飢饉(ききん)が今後のPKOに及ぼす影響などを聞いた。

中満さんは東京で開催されたPKO幹部要員訓練コース開校式で来日。現在のポストに就いて3年になる。【専門編集委員・西川恵】

 ◇期待高まる日本のPKO 選挙監視、人道支援…求められる多様な役割

 --潘基文国連事務総長が8月に来日し、南スーダンのPKOに陸上自衛隊の派遣を要請しました。なぜ日本なのですか。

 ◆ハイチでの自衛隊の働きぶりは国連で高く評価されています。能力が高く、規律もよく、何でも完璧にこなす。国連内の会議でも私は鼻が高いのですが、加えて日本だからこそのものがある。

政府開発援助(ODA)と国際協力機構(JICA)のノウハウと自衛隊を組み合わせることで、さまざまな仕事ができることです。

 例えばハイチで日本は自衛隊と無償援助を組み合わせ孤児院をつくるなどしていますが、これは他の部隊には不可能です。なぜかというとPKO予算はほとんど部隊の人件費と施設費。基地を整備しヘリポートをつくるといったもので、開発支援をする余裕はない。

 日本は自衛隊にODAとJICAを組み合わせることで、平和構築から開発支援につなげられる。特に南スーダンの首都ジュバでJICAは長年活動していてノウハウがあります。また自衛隊はPKO撤収の時、持ってきた重機を置いていくのをご存じですか。他の国は持ち帰るのに日本はその後の開発のためにと置いていってくれる。東ティモールではこうした重機が今も役立っています。

 --南スーダンのPKOはどのくらいの規模に。

 ◆6000~7000人で、PKOとしては中規模で、平和構築ミッションになります。日本はハイチと同じ300人程度をお願いしたい。韓国にも要請しています。
 --今、PKOはどのような時代にあるのですか。

 ◆大きな節目です。私たちが本当にやりたいのは21世紀の複雑な状況に対応できるPKOの能力づくりでした。世界16カ所にPKOが出ていますが、能力の低い軍隊も少なくない。今後、リベリアや東ティモールなどのPKOが撤収するので、能力づくりに傾注できると思っていました。

 ところが「アラブの春」で先が見えなくなりました。リビアには軍事監視員を出すことになっており、シリア情勢次第ではレバノンも混乱しかねない。ソマリアの飢饉はアフリカ連合(AU)が対応していますが、飢饉が広がればPKOを出せということになるでしょう。
 --PKOの性格も変わりましたか。

 ◆昔のPKOはとりあえず状況を安定させるお手伝いをすればよかった。しかし今は平和構築、選挙監視、人道支援、軍事監視と、多様な要求に応えなければなりません。そうなると一層能力の高い軍隊が出なければなりません。まさにターニングポイントにあると思います。

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 ■人物略歴
 ◇なかみつ・いずみ
 米ジョージタウン大大学院修了(国際関係論)
89~98年に国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)で勤務。
クルド難民問題や旧ユーゴスラビア紛争を担当。

民主化・選挙支援国際機構の企画・調整局長、
一橋大大学院教授を経て、

08年8月に国連平和維持活動局政策部長に就任

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