2011年9月22日木曜日

野田“地獄の使者”となるのか…自衛隊“死の派遣”にノリノリ

【夕刊フジ】2011.09.21

 野田佳彦首相(54)は現地時間の20日夜(日本時間21日午前)に、政府専用機でニューヨークに到着。就任後初となる海外訪問は、国連総会などに出席するとともに、オバマ米大統領ら各国首脳との会談をこなすハードスケジュールだ。

 野田首相の外交手腕が試されることになるが、権謀術数渦巻く国際舞台は甘くはない。今回の訪米では、治安悪化が指摘される「南スーダンでの国連平和維持活動(PKO)への自衛隊派遣」と、膠着状態に陥っている「米軍普天間飛行場移設問題の早期決着」という宿題を背負うことになりそうだ。 

 野田首相は21日午後、オバマ大統領や、韓国の李明博大統領と個別に会談。日米首脳会談では同盟を深化させる方針を確認し、李大統領とは未来志向の日韓関係を築くことで一致したい考えだ。 22日には国連本部で開かれる「原発の安全性と核の安全保障に関するハイレベル会合」に出席。23日には国連総会一般討論で演説。東日本大震災からの復興、日本経済の立て直しや円高克服に向けた決意を表明する。24日に帰国の予定。 

 野田首相は所信表明演説で、外交・安保について「新たな時代の呼び掛けに応える」としており、具体的対応が注目されるが、宿題となりそうなのが、冒頭で触れた2つだ。 

 まずは南スーダンPKOへの自衛隊派遣。 南スーダンは今年7月、内戦や飢餓などで約200万人が犠牲となったアフリカ・スーダンから分離・独立した。国連は日本に対して、インフラ整備を担う陸上自衛隊施設部隊のPKO派遣を求めてきている。 

 これまで民主党政権は派遣に慎重だったが、野田首相は今回、国連総会での一般討論演説と潘基文国連事務総長との会談で、派遣検討を表明する方向で調整を進めている。防衛省関係者がいう。 「外務省は国連や米国の圧力もあって乗り気だが、北澤俊美前防衛相は震災対応に加え、『危険すぎる』という思いから断ってきた。

 野田首相は今回の海外訪問の目玉として前向きに検討していると聞く。ただ、PKO協力法は武器使用などで制約が多すぎるうえ、ケニアのインド洋側の港から南スーダンまで、千数百キロの陸路を物資輸送する必要がある。

 野田政権が法整備を先送りしたまま派遣すれば、人的被害が出かねない」 南スーダンの治安について、国連は今年7月、1月から6月にかけて各地で起きた衝突により約2400人が死亡したと報告。

 CNNは8月末、「東部ジョングレイ州で同月18日、民族間の衝突が起き、600人が死亡、750人以上が負傷した」と報じている。 現行のPKO協力法は、自衛隊員の武器使用を正当防衛や緊急避難時に限っている。

 陸自部隊が現地に派遣されても、他国部隊救援や邦人救出にすら武器が使えないのが現実だ。 

 2004年、第1次イラク復興業務支援隊長を務め、「ヒゲの隊長」として現地で親しまれた自民党の佐藤正久参院議員は夕刊フジの取材に対し、「情報によると、南スーダンの治安の悪さはイラクとは次元が違うようだ。民族間の利権をめぐる衝突も多い。物質輸送の補給線も長く、300人程度の派遣で部隊の安全が確保できるか疑問。もし派遣するのならば、最高指揮官である野田首相は、武器使用基準の見直しや、法整備などをきちんとしてほしい」と語る。 

 普天間問題についても待ったなしだ。外務省関係者がいう。 「オバマ大統領は1日、野田首相との電話協議で『普天間飛行場の移設問題を最優先に解決してほしい』と求めてきた。就任直後の電話協議で、ここまで具体的に要請するのは異例。米議会の予算削減圧力が深刻なようで、数週間以内の決断が求められそう。19日に行われた日米外相会談でも、クリントン国務長官から玄葉光一郎外相に対して、具体的進展を求める意思表示があった」 鳩山由紀夫元首相の「国外、最低でも県外」発言で、民主党政権は普天間問題を大混乱させた。菅直人首相は口先では「問題解決をあきらめない」と語ったものの、具体的行動は伴わないまま。野田首相にバトンが回ってきたわけだが、先行きは厳しい。 

 沖縄県出身で、保守的視点から沖縄問題を取材しているジャーナリストの仲村覚氏はいう。 「普天間問題が最後の正念場を迎える時に、担当するのが、一川保夫防衛相をはじめ、玄葉外相、川端達夫沖縄担当相など沖縄問題の素人ばかり。沖縄とパイプがある人もいない。野田政権に普天間問題の解決を期待することはまったくできない。

 唯一の希望は、育鵬社の教科書採択で目覚め始めた沖繩の保守が『辺野古移設賛成』と勇気を出して本音の声を上げることだ」 これ以上、普天間問題を放置すれば、日米関係を悪化させるだけでなく、沖縄県民の感情も傷付ける。これは東シナ海の支配を狙う中国の増長を許すことにもつながりかねない。 政治評論家の小林吉弥氏は「高支持率でスタートした野田政権だが、宿題への対応次第で、信頼感を喪失しかねない」といい、こう続ける。 

 「南スーダンへのPKO部隊派遣は事前に法整備をきちんとするべき。万が一のことがあれば、誰が責任を取るのか。この問題は野田政権を直撃しかねない。普天間問題については、民主党政権の本気度が見えない。日米合意を実現するために、あらゆるパイプを駆使して沖縄県民を説得する作業をしているのか。米国が不信感を持つのは当然だ」

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