2011年8月10日水曜日

<特例公債法案>決着で「ポスト菅」加速 増税と脱原発争点

毎日新聞 - 08月09日 23:55)

菅直人首相の後継を選ぶ民主党代表選は、出馬の意向を固めた野田佳彦財務相(54)が9日、財政健全化路線を堅持する姿勢を改めて示したことで、増税問題が争点になることが確実になった。

野田氏は仙谷由人官房副長官(党代表代行)ら党執行部が擁立に動いた有力候補だが、小沢一郎元代表のグループを中心に党内の反発も強い。

菅首相が「脱原発」路線を明言したエネルギー政策とあわせて、代表選は2大争点を巡って展開しそうだ。

 「不景気のもとで増税するなら(代表選で)支持するか考えなければならない」。

9日の参院財政金融委員会で民主党の金子洋一氏は野田氏を問い詰めたが、野田氏は「日本が財政規律を守るというメッセージを打ちだすことが肝要だ」と譲らなかった。

 増税については、中間派や新人衆院議員などにも反対が根強い。

特に復興増税については中間派候補である馬淵澄夫前国土交通相(50)、小沢鋭仁元環境相(57)が反対を表明しており、馬淵氏は9日、記者団に「(代表選の)議論のど真ん中になる」と争点化を目指す考えも示した。

小沢元代表は9日、衆院議員会館の自室で鳩山由紀夫前首相と会談し、「経済情勢が厳しいので増税の議論をするのは難しい。増税は支持を得られない」という認識で一致した。野田氏をけん制する狙いがあると見られる。

 こうした党内情勢をうけ、4日夜の会合では野田グループの若手議員からも「野田さんは財務省ベッタリと思われている。増税はぼかすべきだ」との懸念が出たほどだ。

しかし、野田氏は月刊誌「文芸春秋」に寄せた政権構想の論文でも「大震災を理由に財政健全化の取り組みを延ばすことは出来ない」と強調した。野田グループ幹部は「立場を変えると『ぶれた』とかえって批判される」と説明する。不評でも姿勢を変えられないのが実情だ。野田氏擁立に動いた仙谷氏は9日、国会内で自民党の鴨下一郎政調会長代理と社会保障などに関する勉強会を発足させた。ポスト菅に向けた与野党連携の下準備で、消費増税を掲げた「税と社会保障の一体改革」を進める野田氏を側面から支援する意味もある。

 脱原発をめぐっては、野田氏は「少なくとも30年までは既存の発電所を活用する」とし、原発輸出でも積極姿勢だ。財政面で菅政権を継承する形のため、菅首相との距離を強調する狙いもある。

出馬が取りざたされている海江田万里経済産業相(62)も野田氏が論文を発表した同じ月刊誌で「唐突な脱原発依存表明で混乱が起きている」と首相を批判した。

一方、小沢元環境相は政策提言で「原発からの段階的撤退は不可避」としている。

 また、9日の特例公債法案成立をめぐる民主、自民、公明の3党合意について、民主党がマニフェスト政策で譲歩したことに党内には不満も募っている。

玄葉光一郎政調会長は同日、党会合で「決定には従うが、自分は不満だ」と語った。小沢グループを中心に、執行部の責任を問う声が高まる可能性があり、代表選の火種になりそうだ。

中間派や小沢グループの一部に擁立の動きがある鹿野道彦農相(69)は同日夜、民主党の当選1~3回の議員が東京都内で開いた勉強会に出席し、「民主党は政権党としての責任を自覚しないといけない。責任を果たすためには党が一つにならないといけない」と党内融和の必要性を訴えた。【須藤孝】

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