2011年6月20日月曜日

【環球異見】 南シナ海問題

【産経】
【環球異見】南シナ海問題
2011.6.20 07:55

ストレーツ・タイムズ(シンガポール)

 南シナ海の領有権をめぐる中国とフィリピン、ベトナムの対立が激化している。ともに同海域での資源探査活動を中国側に妨害されたフィリピンとベトナムは米海軍との合同軍事演習を予定し、「被害者」を自称する中国は大型巡視船を派遣した。緊張をはらむ海図の中で、米国はどんな“針路”をとるのか。関係国の注目が集まっている。


 ▼ストレーツ・タイムズ(シンガポール)
「対決の危険性」に言及
 シンガポールの英字紙ストレーツ・タイムズは14日付の紙面で1ページを割いて「南シナ海の緊張の高まり」を特集、フィリピン、ベトナム、中国にスポットを当てた記事を並べた。
 「マニラは掛け金をつり上げた」という見出しを掲げた記事は、フィリピンにおける中国への対決姿勢の高まりぶりを伝えた。
 例えば、「南シナ海」という呼称に代え、「西フィリピン海」を使用するとしたフィリピン政府の方針を、「いつになく自己の主張を打ち出した措置だ」と分析、フィリピンのある知事が、中国の覇権拡大の動きを「むき出しの交戦性」と酷評し、中国製品のボイコットを呼びかけている動きなども取り上げた。

また、緊張の高まりは「米国が地域の紛争にどう対処するのか、ということへの注目度を増大させている」と指摘。「中国と衝突すれば、米国はフィリピンの側につく」というアキノ政権高官の言葉を引用しつつ、1951年に結ばれた「米比相互防衛条約」の存在に言及している。

 「ベトナム、けんかの最中の実弾演習」という記事では、演習は「手荒なまねをされることを拒否するという、ベトナムの中国に対するメッセージだ」との有識者の分析を紹介し、演習は両国が「“対決”する危険性」を高め、「中国は(演習に)非常に不当な反撃をするだろう」と、有識者の見方を続けた。
 さらに中国国営新華社通信が配信した「中国軍事力増強は作り話」との記事を引いて、中国側の言い分が信じるに足りないものであることを、やはり有識者の言葉でこう指摘した。
 「私は、南シナ海における中国の行動を表現するとき、『独断的』という言葉よりも、『攻撃的』という表現を好んで使うようになった。この2つには極めて重要な違いがある」(シンガポール 青木伸行)


 ▼ウォールストリート・ジャーナル アジア版(米国)
米国の役割、より重要に
 「中国を取り込む動きを続ける一方で、安全保障上の責務を維持し、合理的な行動の基準を支持し続ける以外に米国の選択肢はない」

米シンクタンク、AEI日本部長のマイケル・オースリン氏は14日付米紙ウォールストリート・ジャーナル(アジア版)への寄稿で、東南アジア諸国との緊張を高める中国に対し、米国がとるべき態度をこう定義した。
 氏は中国の行動について「中国が思い通りに紛争を解決するため、軍事力の行使にためらいを感じないことを国際社会は懸念すべきだ」と強調。同時に米国もアジア諸国もまだその対処方法は見いだしていないとして、3つの理由から適切な対応の重要性を訴える。
 氏がもっとも重視するのは、隣国が「中国の要求に従わざるを得ない」と感じる状況を中国が作り出すことが慣例となれば、アジアの地域政治の性質が大きく変容する恐れがあるという点だ。これは「中国が際限なく他の要求もできる」ようになり、「多国間の協調的な行動パターンに戻すことは困難になる」と分析する。
 また、中国が隣国を脅しても許されるなら、北朝鮮のような「破滅的な政権」はつけ上がって同じ行動をとろうとし、地域の不安定化を増進させる。さらに中国の嫌がらせに対してベトナムが見せた反応のように小国が常に脅しに泣き寝入りするとはかぎらない。「威嚇や衝突の可能性は増大するだろう」と氏は懸念を示し、中国の行動はすでにインド・太平洋地域で軍拡競争を引き起こしていると指摘する。

一方で氏は、「米側に立ち、中国と対峙(たいじ)しバランスをとっているとみなされることを望む国はほとんどない」とし、「米国の役割は難しくなると同時に、より重要になる」としている。(宮下日出男)

 ▼国際先駆導報(中国)
中国はあくまでも被害者
 中国国営新華社通信が発行している国際情報紙、国際先駆導報は16日、「ベトナムが南海で頻繁に挑発行為を繰り返す」と題して、最近の南シナ海における中越対立の原因について分析する記事を1面トップで掲載した。ベトナムが同海域で実施する米国との合同軍事演習などを「現状を変えようとする過激な行動」と批判、「中国は自国の権益が他国に奪われることを座視できない」と南シナ海に対する管理強化を主張した。
 記事は、南シナ海における一連の対立は、紛争を話し合いで解決することを規定した「南シナ海行動宣言」(2002年)に違反する行為を、ベトナムが一方的に行っていることに原因があり、中国はあくまでも被害者である-と強調した。

そのうえで、問題の処理には「2つの原則がある」とし、「ひとつは第三者が介入しない当事者だけの解決。もうひとつは武力に訴えず、平和的な方法で臨むことだ」と主張した。
 このため、米軍と合同演習を実施しようとするベトナムは、2つの原則を無視することになり、中国は対抗措置を取る用意があると述べた。
 また、ベトナム国内で最近、反中デモが起きていることについて、同紙は「ハンバーガーを食べ、ヒップホップを聴いて育ったベトナムの若者は、自分の国が20世紀に米国に侵略され、中国に助けられたことを忘れたようだ」と厳しく批判した。
 ベトナムが中国の領海内で油井を掘削、毎年数百億ドルの利益を得ているとも主張し、米国を念頭に「今後、地域外の勢力が参入することも考えられ、同海域の情勢はさらに複雑化し、対立が悪化する可能性もある」との専門家の見方を紹介した。(北京 矢板明夫)

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