【産経】
多様化するテロ インドネシア 毒物混入、「本爆弾」水際で阻止
2011.6.19 12:00
インドネシア・ジャワ島中部のスコハルジョ県で今年5月、夜明け前の奇襲作戦の後、テロ容疑者の自宅周辺を警備する警察官ら。テロとの戦いはインドネシアでも続いている(AP)
インドネシアでは人知れず、テロリストと治安当局との攻防が繰り広げられている。テロが企てられては、その多くを治安当局が水際で防いでいるのだ。両者の攻防を追うと、テロの動向と手法のトレンドがみえてくる。
最新のトレンドは、有毒のシアン化物を使った「毒物テロ」である。
この毒物テロを企てたテロリスト7人が10日、首都ジャカルタで逮捕された。7人は食料や、ミネラル・ウオーターのペットボトルに、注射器などでシアン化物を混入。それを警察署の食堂や、警察の寮に持ち込むことを計画していた。
治安当局は4日間にわたる「作戦」の末、容疑者を一網打尽にし事なきを得た。だが、「毒物テロ」という手法に、テロリストが初めて手を染めたことに対する危機感は強い。
治安当局幹部は「テロ攻撃の新しい形態だ。毒物を用いたテロはいつでも、いかなる場所でも起こりうる」と警戒する。つまり「爆発物よりも発見が難しい」ことが最大の難点であり、テロリストが毒物テロを画策した最大の理由もそこにあると、治安当局はみている。
7人の背景などは、つまびらかではないが「新しいテログループであり、他の組織には属していない」という。
イスラム系テロ組織ジェマ・イスラミア(JI)といった、老舗的なテロ組織の力が、治安当局の「掃討作戦」によって低下する中で、小規模グループの「新しい細胞」が台頭していることは、すでに指摘されているところだ。
彼らこそが、インドネシアにおいてはこれまでになかった新しい手法を、実行に移している主体である。
毒物テロが発覚する以前の目新しい手法としては、例えば、本をくりぬき、その中に爆弾を仕掛けた「本爆弾」があった。この爆弾は3月、ジャカルタの警察関係者、イスラム穏健団体の本部などに送りつけられ、このときは4人の負傷者を出している。
ここ数カ月で治安当局はテロリスト数十人を逮捕、今月拘束された、バリ島爆弾テロ(2002年)の容疑者も含まれている。
こうした攻防は、「テロの多様化」という質的な変化に直面している。(シンガポール 青木伸行)
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